強い紐帯と弱い紐帯-“Strong ties and weak ties”ーグラノヴェター博士による論文から。

紐のかかった包装紙

今日の記事では、米国大学を卒業し、15年以上に渡って「気候変動」や「地球温暖化田一作」などに特化した翻訳会社を経営している、翻訳者の私・小山ケイが、グラノヴェター博士による論文「強い紐帯と弱い紐帯 (Strong ties and weak ties)」からインスピレーションを得たことについて書いていきます。

<もくじ>
●グラノヴェター博士による論文「強い紐帯と弱い紐帯」
●実生活での経験
●ビジネスパーソンとして私が欲しい情報
●実際にあった話

●強い紐帯と弱い紐帯ーグラノヴェター博士(Dr. Granovetter)による論文”The strength of weak ties”から。

“Strong ties” and “weak ties.”

強い紐帯と弱い紐帯。もともとは、米国社会学者のマーク・グラノヴェター博士(Dr. Mark Granovetter)が1973年に出した実証研究に関する論文、「弱い紐帯の強さ (The strength of weak ties)」のなかで説きました。

「紐帯」は、ネットワーク、つながり、人間関係と言い換えてもいいでしょう。

強い紐帯とは:

血縁家族

親友

仲の良い友人知人

毎日顔を合わせる井戸端会議の人たち

終身雇用制の会社組織 など。

弱い紐帯とは:

すれちがった人

いまであったばかりの人

一年に一度、会うか会わないかの人など。

弱い紐帯からのほうが、有益な情報を得られやすい、その人にとって創造性が刺激される話を聞きやすい、ということです。

●実生活での経験

うさぎのおきもの

私がこの説に出会ったのは、コロンビア大学で教鞭をとられている、安田雪先生の本、「人脈づくりの科学」を読んだときでした。そして、自分のことに置き換えてみてハッとしたのです。

私が卒業した母校青学の青山ビジネススクール(ABS)でのできごと。

有志が集まってひらいている勉強会があり、私も数年にわたって参加していました。

もちろん、勉強会ですから、各業界の動向や世界的なビジネスの潮流、なんてことはとりあげるのですが、ふとした雑談やその会の呑み会、懇親会等で出てくる話題に気づくことがありました。

卒業して何年もたっていながら、ABSのだれそれ先生がプライベートでどうした、同級生のだれそれがどうした、この業界の顔はだれそれさんである等、噂話の域を出ていない話が多いのです。

それも、耳にタコができるほど聞いた、年寄の繰り言みたいな話

何年もつきあっている顔見知りどおしの話題としては面白いのですが、情報としての普遍的価値はそれほど高くない。その情報によって自分の世界観が広がるわけでも、人間としての器が広がるわけでも、自分の創造性が刺激されるわけでもない。だいいち、その話題からは「お金」が生まれない(笑)。

雑談は、独創的なアイデアが生まれやすいですし、私も人との雑談は大切にしているのですが、でも、ねぇ・・・。

実は私が参加していた勉強会の面々、「紐帯」がとても強いのです。

大学院を卒業した後も仕事のかたわら定期的に集まっている有志です。ABSの卒業生ではない人が外部からとびいり参加した際、「みなさん、本当に仲がいいですねぇ」としみじみ感想をもらしたほど。それはそれで居心地はいい。

●ビジネスパーソンとして私が欲しい情報

でも、私がほしい情報やインスピレーションはそういうことではありません。

たとえば

★ABSで投資を教えている先生がいま、どんな金融資産の運用方法をしている

★それによってこれこれの具体的な数値の利益が出た

★どこどこの企業でこれこれの仕事と人材がもとめられている

★まだマスコミには出てきてないけれど、この業界・企業がヤバそうだ

★ちかく大きな合併をするだろう

「私の会社でいま、こんな仕事を外注しようとしているの。私が『いい会社を知ってる』って上司に提案してみるから、コヤマさんの会社に発注してもいい?」など。笑

もちろん、

美術展や面白かった本

おいしいコーヒーのお店

良かったCDの紹介

なども聞いておけば、別の商談の際に口コミ情報としてスモールトークで利用できる可能性もあります。スポーツの話題もしかり。

こういう情報は、コンテキストが紐帯内全体に深く共有されていて、ともすると話題が噂話に終始しがちな強い紐帯よりも、共有されているものが限られている弱い紐帯から来やすいです。

これまでの経験から私もつくづくそう感じます。

 ●実際にあった話

私のまわりにも、

ひさしぶりに町で再会した人と立ち話していたら、『どこどこの郵便局で人手が欲しいらしいよ』

と聞いてその郵便局に連絡してみたら、即採用された。その人とはそれほど深いつきあいでもなかったし、何年かぶりで偶然、再会しただけだったのに」なんて人がいます。

ちなみに、その人は仕事を探していました。

もし良い人脈形成をしたいと思っていたり、自分が人間として成長できる出逢いが欲しいと思っているなら、自分が所属するネットワークの紐帯の度合いと、そこでやりとりされている話題や情報には普遍的価値があるかどうかを探ってみる必要があります。

そして、それが日増しに少なくなっていて、自分の成長にはまったくつながらないと感じたとき、そのときが、その紐帯と結ばれたコブ(node)を意図的に緩くして、思い切って新たな出逢いの旅に出るタイミングです。

強い紐帯と弱い紐帯。

私も自分が参加していた強い紐帯の面々への愛情は注ぎながら、今日も意識的に、能動的に、新たな出逢いの旅に出ます。