復活!「大坊珈琲店」(2018年5月12日土曜日)(パート2)

大坊さんのコーヒー。大倉陶製のカップ。

今はなき、南青山の伝説の名店「大坊珈琲店」に10年以上に渡って通い続けた私・小山ケイが、今日は前回の記事の続きを書いてまいります。

<もくじ>
●「大坊珈琲店」店主・大坊さんのコーヒーを楽しむ会。
●”Today’s coffee”「本日のコーヒー」

前回の記事は下からご覧になれます。↓↓↓↓↓

●「『大坊珈琲店』店主・大坊さんのコーヒーを楽しむ会」

 

前回は、惜しまれつつも2013年に閉店した、「大坊珈琲店(Daibo Coffee House)」が一日、渋谷宮益坂に復活したお話をしました。

「復活!大坊珈琲店」(2018年5月12日土曜日)(パート1)

★不思議なデジャヴュ

さて、3番が終わって次は4番です。

4番をご用意くださっている間、私が感じていたのは、いつもの、既視感です。

Deja vu。

大坊さんのコーヒーはいつもそうなのですが、私には不思議な既視感があるのです。

私の潜在意識の奥深いところにあるすでに習慣となった記憶と結びついている既視感。

次の瞬間、それがなんであるのか、明確に感じ取りました。

 

受付をしてくださった女性が、お菓子をみなに配ってくださったのです。

懐紙に乗ったお干菓子(ひがし)。

何の違和感もなく、そのお干菓子が出されて当然だと思えるタイミングです。

しかも、懐紙に乗って。

懐紙も、お干菓子も、日本の茶道で使われるものです。

茶道で薄茶のときにいただくお干菓子や濃茶のときにいただく主菓子(おもがし)を受けるために、

 

文字通り「着物の懐に入れておく紙」が懐紙です。

その懐紙に乗ったお干菓子が虎屋のものであることは、

何度も実際に購入している私にはすぐにわかりました。

 

★「亭主」大坊さんとその亭主による一服の茶(コーヒー)

 

「大坊さんとお話して、お菓子があるといいだろう、ということで、落雁を買ってみました。虎屋のです」

澁澤さんがはにかんだようにおっしゃいます。

ああやっぱり。

私もそれを自然なこととして受け止めている。

この二つのコーヒー(茶)の間にはお菓子が出されるのだろう、亭主(大坊さん)が一期一会(Ichigo-ichie)で丁寧に茶(コーヒー)を淹れてくださっている間、2つにくっつけられた長方形の机で、正客(一番手前の客)、次客(2番目の客)、そしてお供の人たち(大坊さんの会ではたまたまそういう並びになったのですが・・・)というぐあいの席にずらりと横一列になって並んで亭主のお点前(おてまえ)をゆっくり、眺めているのだから。

 

あぁ、大坊さんのコーヒーは、茶道に通じていたんだった。

★「茶道」と大坊さん、そして私

長年にわたって茶道を経験している私は、大坊珈琲店へ足を運び、コーヒーをいただくたびに、茶道に通じる既視感を感じていました。

だから、コーヒーをいただくまえに、机につけた両手の指先を軽く合わせて、心の中で「お点前、頂戴いたします」といいながら、一瞬、カップを自分の目の前で持ち上げたりしていました。

そうしないと、気持ちが落ち着かないのです。

私のささやかな感謝の気持ちを表さないとと思って。

今回も既視感に従って私は、大坊さんの3番も4番も、「いただきます」と一瞬、カップを自分の目の前で持ち上げました。

さすがに手前を向こうに回しはしませんでしたが。笑

 

★参加されたかたがたの感想

最後のかたまで4番が配られてから、大坊さんが一列に並んだ私たちのまえに独り、椅子を用意されました。

文字通り車座です。

大坊さんがひとりひとりに感想をお聞きになられていると、おひとりのかたがこんなことをおっしゃいました。

「飲むと、この舌のあたりではなく、もっと上の、高い位置の、なんと表現したらよいかわからないけれど、その高いところに残る味わいを楽しめました」。

それを聞いた大坊さん、

「それはとてもうれしいです。そんなふうにならないかとつねづね思っているのです。」

感無量といった表情をされます。

そして、「私の個人的な好みですが」

と前置きし、

「後味がずっと残る、というよりも、飲んだ後はすぐに舌からすっと消えてなくなるような味わい、そんなコーヒーを求めているのです」

と一同を見渡しました。

それを聞いて、となりにいらしたかたも、

「私もそう思いました。舌ではなくて、この鼻の上から頭の部分に移っていくような、そんな味わいがありました」

と賛同されました。

 

 舌のうえでしばし転がした味わい。

 飲み干したとたん、舌の奥で一瞬深い刺激を残しながら、飲むものがそれに気づいた刹那に、さっぱりするほどに姿を消してしまう。

 

 「舌」という物質的な次元を凌駕して 私たちの精神性に残り香のような余韻を遺してくださるコーヒーが大坊さんのコーヒーなのだと、みなさんのお話を聞いていて私もあらためて感じました。

 

大坊珈琲店の豆

向田邦子さんや村上春樹さんをはじめ、いわゆる文化人と呼ばれるかたがたも「おいしい」とつぶやき、そして舌ではない、もっと高次の場所で大坊さんのコーヒーの余韻をたのしまれた。

それを感じられるかたがきっと、いつまでも大坊珈琲店のファンになられるのだと思います。

やっぱり大坊さんは、「大きなお坊さん」です。

 

●”Today’s coffee「本日のコーヒー」

(本日の豆は、グアテマラ、タンザニア、コロンビアの豆だそうです)

「4番」(Daibo’s No.4)

主観で評価(5★ = perfect)

(based on my objective taste lol)

酸味 (Sourness):★★★★

甘味 (Sweetness):★★

まろやかさ (Mildness):★★★★

苦み (Bitterness):★★★★★

香り (Aroma):★★★★★

カップ (Cup):金継ぎされた大坊珈琲店時代からのぐい飲みカップ。

Demitasse-like Japanese small cup  with gold-reinforcement called “Kin-tsugi”

(I put two photos of Kin-tsugi technique below)

 

*帰り際、

「大坊さん、去年は古希(70歳)じゃなかったですか?」

と尋ねたところ、

「え、あはは、はぁ、そうなんです」

「いやぁ、おめでとうございます。お花でもお贈りしようと思っていたのですが」

去年はなんやかやで、大坊さんには会えずじまいだったのでした。

ご本人からはイベントのおハガキを頂戴したりしていたのですが・・・。

 

どうぞいつまでもお元気で!

Kin-tsugi technique of gold reinforcement (1) (Daibo-san’s cup shot by Kay Koyama)
Kin-tsugi technique of gold reinforcement (2) (Daibo-san’s cup shot by Kay Koyama)