今日の記事では、破産申請したことが報道された米国ブルックス・ブラザースについて書いています。
<もくじ>
●米国高級紳士服ブルックス・ブラザース倒産
●日経などによる詳細(本日2020年7月9日に確認してみて)
このブログ「小山ケイ:Feel this precious moment」はいくつかのカテゴリーに分かれています。今日は「企業分析」のカテゴリーで書きました。昨日書いた記事は下からごらんになれます。
Kay Koyama MBE114 5-5-9-1F Akasaka Minato-ku Tokyo, Japan
●米国高級紳士服ブルックス・ブラザース倒産(破産申請)。
昨晩おそく、日経新聞の速報が入ってきました。
「米国ブルックス・ブラザースが破産法申請」。
私にとっては先日このブログでも書いた、シルク・ドゥ・ソレイユに次ぐ衝撃を受ける大手企業・組織による倒産です。
ブルックス・ブラザース(以下、BB)は青山にも30年以上まえから大きな店舗を構えています。がっしりとした壁面がまるで日本の城壁のようであり、我が母校青山学院からは歩いて行ける距離だったこともあって私も授業の合間や学校帰りなどに時々足を運びました。
主な原因はやはり、コロナウイルスの拡大のようです。
速報をアプリとメールで受け取った瞬間に私が思ったことは次のようなことです。
1) コロナウイルス拡大による在宅勤務者の増加
2) それによる固定費がひっ迫。
3) 在庫
4) BBのビジネスモデルと時代とのずれ(「間尺が合わない」)
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1) 在宅勤務になるとスーツや出勤服を着なくてよくなります。
ブルックス・ブラザースの服は価格帯が高額であることもあり、購買層も限られていたように思います。
米国での利用者も一般庶民というよりも政府の要人や大統領級のトップ、大企業の経営者や幹部などだったはずです。
映画好きの私がレッドカーペットや米国トークショーなどを観ているかぎりでは、「アルマーニ」は高級服として取り上げたり利用されていましたが、さいきん「ブルックス・ブラザース」を取り上げていた人を見た記憶がありません。
青学近くに店舗があったこともあって店内をウインドウショッピングしていた私にとって、「いったい誰が着てるんだろう」と思ったものです。
2) 東京のブルックス・ブラザースもそうなのですが、ブルックス・ブラザースの出店先は一等地です。
先日のシルク・ドゥ・ソレイユ倒産のブログ記事でも書きましたが、売上が大きな企業や組織や右肩上がりでうまく行っているときはキャッシュの流れがありますが、今回のコロナウイルスによる社会的な打撃があると、固定費が一気に首を絞めることになります。
小山ケイ過去記事】予期せぬことが起こることもつねに頭のすみに入れておく。
固定費の大きな大企業・大組織ほど、今回のコロナウイルスのような事態が起きた時は、倒産も突然です。
3) 高品質のスーツやシャツを作っていたこともあり、良い素材をストックしていたはずです。これが上記の2)にも通じますが在庫として残ってしまったことが考えられます。
ブルックス・ブラザースがTOYOTA生産方式の「ジャストインタイム(JIT)」を利用していたと私は聞いたことがありません。
4) 上記のとおり、利用層は限られていたように思います。
BBのビジネスモデルは私から見ると、
★限られたハイエンドのエスタブリッシュメントがロイヤルカスタマー
★それゆえ年齢層もどちらかというと中年以降
★各顧客の客単価は高い。
★ブリック・アンド・モルタルではイメージ戦略を活用(一等地に出店。ZARAと同じです)
経営層が高級紳士服をかっちりと着こなして出勤していた時代(それも運転手つきの専用車にでも乗って)には大いに機能したビジネスモデルだと思います。
けれど、今回のコロナ禍で多くの企業が在宅勤務を奨励しました。
家にいれば高級紳士服を着る必要はなくなります。婦人服もしかりです。
(あの大富豪ウォーレンバフェットでも、普段は毛玉のついたセーターをずっと着ていたりする、と本で読んだことがあります!)
さらに。
経済をけん引する業種も時代とともにどんどん様変わりしています。いまや時代は完全にIT、デジタル、ゲーム業界であり、そこで働く人たちもわりとカジュアルで動きやすいかっこうだったりします。昼休みや帰りにサーフィンでもできそうな。笑
日本であれば、夏は異常気象かと思われるような猛暑が毎年の常となり、クールビズの後押しもあり、通気性がよくて胸元も開いた服装での勤務が好まれるようになりました。
某東証一部上場の老舗企業に勤める若手社員が夏にTシャツとビーサンで出勤していたので、「究極のクールビズだね」と打ち合わせの合間に声かけたところ、笑ってましたね。笑
BBには申し訳ないですが、都内で夏にBBは着られないです。
若者も、ものを持たない生活やシンプルな生活を好む人が国内外で増えてますよね。日本であればユニクロやMUJIがあるので、手ごろな値段で縫製もしっかりとして素材もよい服が手軽に利用できます。
ブルックス・ブラザースをわざわざ利用する理由がない人たちが増えたとも言えます。こういう人たちが世界経済をどんどん動かしています。
●日経などによる詳細(本日2020年7月9日に確認してみて)
私の上記の4つの分析は間違ってなかったようで、日経によると「(ビジネスパーソンたちの服装の)カジュアル化、デジタル化(オンラインショッピングや今回のテレワークの波も含めているのだと思います)という第3の波も乗り越えることはできなかった」とあります。
バブル期の日本企業のように、お門違いのゴルフ場経営に乗り出したり巨額の余剰金を海外一等地の買占めや絵画の購入などにつぎ込んでバブルの崩壊とともに倒産、ではなく、本業を大切にしていながらも上記1)-4)のような原因でコロナ前から火の車になりはじめ、コロナ発生が決定打となったようです。
創業は1818年。この202年の歴史の間には歴代の米国大統領をはじめ、著名なアーティストも利用していたとのこと。
Made in USAを大切にして縫製工場もニューヨーク州にある、と日経の記事には書いてあります。諸外国と比べて「歴史が浅い若い国」と認識するアメリカ人が多いなかで、202年もの歴史を持つ国内生産企業が破産申請するのはアメリカのかたにとってもコロナ禍のなかで二重の心理的な打撃だと思います。
(私が米国に留学していたころ、日本とドイツは「古い伝統ある国」として描き、「とびきり若い、でも元気な国」として自国アメリカを描き、「だからこそ若くて元気な国の企業がつくる車はいいですよ~」という流れでクライスラーだかGMだかのTVCMが流れて興味深く感じたことがあります)
ブランドも大きいですしイメージも良い企業だけに惜しいですね。
負債総額はこれまでのところ日本円にして約535億円とのこと。
再建を望んでいるそうですが、いままでとおりに経営してももちろんうまく行きません。バブル期の日本企業のように無理な投資をした結果の破産でもありませんし、経営層の問題(刑事民事いずれも)でもないからです。
ブルックス・ブラザース青山店は、がっしりとした丁寧なつくりの入り口を入ると、まるで時代は「大草原の小さな家」の都市部にタイムスリップしたかのような、趣のある調度品や棚に囲まれたカウンターを挟んで店員さんが接客してくださるようになっています。
【BROOKS BROTHERSというブランドを蘇らせるために。小山ケイ】
a) Take the extreme strategy of “Blue Ocean” – 限りなくブルーオーシャンでいく。→ 顧客を選ぶ。顧客を狭める。(米国大統領御用達。世界の王室御用達。世界の政府要人御用達。「世界の場に出るときのスーツはBROOKS BROTHERS」と言われるぐらいの思い切った戦略。プーチン(Putin)さんでも着るぐらいの)。
b) Go back to basics of “Brooks Brothers” – 基本にまずは立ち返る。→ 低迷し始めたころに手を出してしまった婦人・子供服関連の事業からは手を引く。紳士服オンリー。
*日本のOfficial Websiteを観てみました。GAPかRalph Laurenのサイトかと見まがうような、若手の白人モデルがトップページで着飾っています。私の中のBROOKS BROTHERSはこういうイメージではまったくないです。
再建に向けては、BBのポジショニングをいま一度、明確にする必要があると思います。
c) Ultimate branding/differentiation as a prestigious entity – 究極のブランド化。差別化。→ 下々のものには手が届かない名門、でいいのだと思います。
d) Be a butler of loyal customers all over the world – 単価の高い上得意の顧客をとにかく大切にする。
e) No discount/no coupons – 値切らない。バーゲンしない。
f) Reduce shops/stores in accordance with effective branding-ブランド化・差別化されれば、出店数も制限できる。
*日本国内であれば、ファッションのメッカ「青山」に店舗があるのは正解だと思います。他の世界的なブランドの多くもぞくぞくと出店しています。その分、青山を基幹店としてそのほかの店舗は採算性やイメージ戦略との整合性を確認する必要があると思います。
g) Meet the loyal customers frequently – そのぶん、日本の「御用聞き」「外商」のようにして、上記a)d)の上得意の顧客のところへ直接出向く。
h) Say farewell to the online shop or create a new brand other than “Brooks Brothers”– オンライン通販はしない。する場合はブランド名を変える。
i) Be special as Brooks Brothers used to be –レアな存在になる。「そこに行かないと手に入らないブランド」。ありがたみを演出する。
j) Duplicate the suits once created for several popular presidents and sell them only in brick-and-mortar shops to create “rareness”-歴代米国大統領のなかで人気のある人が着た服を再生(復刻)。数を制限してなおかつ高価格帯で店舗のみで販売。
“米国ブルックル・ブラザース倒産。Brooks Brothers has bankrupted.” への5件の返信
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