今日の記事では、カナダの映画監督David Cronenberg氏のいくつかのセッションからインスピレーションを得て書いています。
<もくじ>
●インディペンデントで行くか、大手企業のもとで行くか。それとも。
●具体的にどんなやり方をするか。どんなふうになるか。
このブログ「小山ケイ:Feel this precious moment」はいくつかのカテゴリーに分かれています。今日の記事は「新しい生活様式・テレワーク・仕事形態に向けて」のカテゴリーで書きました。働き方改革やリモートワーク・ノマドについて私が思うことについては以前、下の記事で書きました。
●インディペンデントでいくか、大手企業のもとで行くか。それとも。
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私が約30年にわたって敬愛しつづける、カナダの映画監督David Cronenberg氏のYouTube動画をいくつか観ていて、「インディペンデントでいくか、大企業のもとで行くか」ということについて改めて考えることとなりました。
監督ご自身は自分のことを「independent film maker」と位置付けておられます。
大手映画会社とも「取引」があったけれど、基本はインディペンデントとして映画製作にかかわっておられる。
私自身は大企業の中で働いたことも、インディペンデントな存在として働いたことも、どちらもあります。監督のお話を聴くごとに、自分のことととても重なって「業種は違えど映画づくりも実業界も同じなのだ」とつくづく感じます。
大手企業のもとで働く利点はもちろんたくさんあります。一番大きなことはやはり、Cronenberb監督もおっしゃっているように「金銭的なこと(financing)について考えなくていい点」だと思います。
いっぽうインディペンデントで行く利点の一番の魅力はなんといっても、「自分のやりたいようにやれること」。仕事をしたいときにできますし会議もいらない。映画作りであれば、最終的な編集に至るまで、自分に裁量権があるそうです。
さいきん、故・黒澤明監督が「乱」を製作されたときのことについてすこし調べました。
製作費25億円を集めるのにとても苦労されたこと(最終的には26億円)、結果としてペイできたのは16億円だったこと、それゆえ巨額の赤字を抱えたことなどを知るにつれ、「こういうことがあるから今の大手映画会社の間でPre-Visなるビジネスが発生してくるのだ」と思えました。
新しい働き方や仕事形態・生活形態が生まれると、それぞれのかたが「個」として働くことになるはずです。
在宅勤務をおしすすめるために大人数での会議が不可能・不要になったり、コロナウイルスの蔓延による収入減少を起因に企業が固定費である従業員の給与や賃料・不動産にかかわる経費を削減するようになったり。通勤費も削減されます。
法制度も整えられる方向にむかっています。いまではある一定の基準を満たせば正社員と同じく社保も入れます。有給や福利厚生も充実させざるを得ない流れとなっています。組合への加入もしかり。
だから、正社員・契約社員、場合によってはパート・アルバイト・時短勤務者、それぞれの違いが将来はとても小さくなる。
さらに。
これだけ個人が個人として世界に向けて表現活動ができる世の中になったことがさらに拍車をかけます。SNS、YouTubeなどのメディアを利用する人は増え続けているうえに、表現するための機器や手段も一般人が手軽に利用できるアプリやソフトもあります。
工夫とアイデア、クリエイティビティ次第ではそれらの利用だけでひとつの映画や楽曲、番組を作ることも不可能ではなくなっています。
日本政府が副業を後押ししていている点も、現在は会社員としてひとつの企業で仕事をしているかたの働き方に変化をもたらす可能性があります。
●具体的に、どんなやり方をするか。どんなふうになるか。
先日も書きましたが、これからの時代、一人の人がさまざまなことをすることで収入を得る仕事形態となるのじゃないかと思います。
たとえばいまでもすでに、「YouTubers」と一言で言ってもいろいろなかたがおられます。
★YouTubersとして専業でやっているかた
★会社員が副業でやっているかた
★フリーランサーのプログラマー
★芸能事務所に所属する芸能人
★学生さん
★小学生(とご家族)
★専業主婦のかた
などなど。
犠牲にするものもある。
たとえば前述のとおり、資金繰りです。
前述の黒澤監督の話でいえば、「乱」は国内外からいまでも「監督の名作のひとつ」としてよく取り上げられます。いろいろな賞も受けている。
4億円をかけて建築された城を本当に焼き払うシーンは圧巻です。
けれど赤字だった。興行収入は。
26億円の製作費に対して16億円の「売上」ですから、単純計算で10億円が回収できなかったということになる。
ハリウッドの大手企業による映画であったら、上層部は映画製作には無頓着(?)だとしても「お金」に対してはとことんシビアに策を講じるはずです。でなければ「Pre-Vis」という商売が発生するはずがない。
(Pre-Visは経営層に対して事前に「こういう映画になるんですよ」という、ほぼ完成版に近い映像をCGなどを駆使して見せる技術なのだそう。「経営層に想像力がまったくないから(脚本から映像を自分で思い描くことができない)」とはCronenberg監督のお言葉)。
★★★★★Quoting from the official YouTube video of RIFF (Hello from Japan! (^_-)-☆)★★★★★
そして大手映画会社のもとでの映画製作は、監督から「編集権」を奪います。だから初公開後何十年とたってから「ディレクターズカット」版が出たりする。
安定的な収入源(financing)を得るか、それとも自分の「編集権」(自己裁量権)を得るか。
もちろん、経理処理もありますし、確定申告のような現実的な処理も自分で行うことになります。
イメージへの影響という「犠牲」もあります。たとえば芸能人。
有名人がYouTubeに進出してきたりTwitter上でやたら炎上しそうなことを頻繁に書き込んで目立とうとしたりすれば、「芸能界で干されてこっちにきたのかな」とこちらは勘繰ります。笑
イメージは正直、あんまりよくない。
格下げした小物みたいだから。
いままでさんざん、テレビにでまくってたのにどうしたんだろう、と。
その他の「犠牲」としては、個人が「マス」ではなく多くの個人に向かってインテラクティブに表現しあうのがYouTubeやSNSであり、それゆえ多くの個人が(それも匿名で)攻撃してくることがある。
これからの時代、新しい生活様式・仕事形態をとり入れる人が世界規模で増えるにつれて、具体的にどんなやりかたでやっていくのか。
1) 個人というインディペンデントな存在として仕事をしたり表現したりすることが当たり前となる時代は確実に到来します。それは認識する。
多くの日本のかたもとっくに気づいておられるように、企業に就職したからと終身雇用制で安泰、という時代はどんどんなくなります。
2) ファイナンスに対してシビアになる。
自分のことだけではありません。仕事を依頼する相手に対してもそうです。
フリーランサーを呼びつけて1時間話を聞いても、その人にけっきょく仕事を依頼しないということになれば、そのフリーランサーは無償で1時間を提供したことになってしまいます。
会社員のかたが見落としがちなところだと思います。私の経験上。
3) メリット・デメリットをよく把握しておく。
前述のように、インディペンデントで行く場合はやはり、資金繰りについて考えなければならないと思います。
大手のもとで仕事をしたり社員として働くのであれば、自己裁量権はもちろんありませんし自分の企画やアイデアが企業帰属のものになってしまうこともあります。
(Cronenberg監督の経験だと、「映画会社は何度も書き直した脚本に対するお金は払ってくれたけど、最終的にはまったく違うものを会社として作った。脚本としてのクレジットもなし。自分のアイデアは一部利用されていたけどね」とのこと)
4) こまごまとしたことをどうするか。
「餅は餅屋」です。アウトソーシングしたり専門家(税理士さん、会計士さん、弁護士さん、社労士さん、行政書士さんなどなど)にお願いしたり秘書を雇ったり、ということもあると思います。
会社員のかたが副業をされる場合も、上記のような人の力を借りる必要がでてくることもあるでしょう。
日本やヨーロッパの映画製作のように「●●組」をつくるか(Cronenberg監督は「ヨーロッパの映画製作に影響を受けていつも同じ仲間で作っている、とおっしゃってます)。
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