今日の記事では、15年以上に渡る「サステナビリティ専門翻訳会社」を経営してきた私が考える、「これからの日本のESG投資」について書いています。
<もくじ>
●ESG投資。15年以上に渡る「サステナビリティ専門翻訳会社」を経営してきた私から見て。
●個人の投資家がパワー(Driving force)となる。日本でのESG投資。金融機関や日本企業組織なんかからじゃない。
このブログ「小山ケイ:Feel this precious moment」はいくつかのカテゴリーに分かれています。今日の記事は「Sustainability(持続可能性/サステナビリティ)」のカテゴリーで書きました。同じカテゴリーの過去記事は下からご覧になれます。
●ESG投資。15年以上に渡る「サステナビリティ専門翻訳会社」を経営してきた私から見て。
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日経新聞に「ESG投資ー個人にも拡大」とありました。
2020年4月から6月までの関連投資信託には約8兆円規模の投資額がESGに流れている、とのこと(日経)。
ESG投資とは投資先企業の以財務内容ばかりではなく以下の3点についても考慮して投資していく手法。日本ではSRI(社会的責任投資)とほぼ同類として扱われています。
E – Environment
S – Social
G – Governance
個人の方にとってはESG投資は、金融機関が選んだ銘柄の投資信託を購入することによってその「意思表示」ができます。
つまり、個人のESG投資は現在のところ、日本においては「金融機関」の審美眼(能力)に掛かっている、ということ。
もと銀行員の私は何を隠そう、そうして個人のかたがたからお預かりした大切な拠出金等を運用する部署で働いておりました(ESGではありませんでしたが)。
「眠れるくじら」と称される某G●●●(もとネンプク)の巨額の拠出金も預かっておりました。
そして私の上司たちは機関投資家(バイサイド)だったのです。
いやぁ・・・・あのかたがたがESG投資をわかってるとは思えません。もちろん時代も違いますし、各金融機関でも適切な人材を確保したり養成したりはしていると思いますが。
(だからこそ日本では「適任のESG運用者がいない」とまわりに良い人材の紹介を依頼する金融関係者がいるのだと思います)
個人のかたならとっくに気づいておられるように、ESG投資の基本は「利他主義のための意思表示」です。
世の中のため。
後世のため。
地球のため。
キリスト教ならこれを「愛」と表現するかもしれません。その証拠に、ESG投資はもともと、キリスト教がひろく信仰されている米英で広まった経緯があるのです。
(一説には18世紀にメソジスト系運動家ジョン・ウエスレーが経済活動と倫理を両立させるように説いたことなどがはじまり、とされているようです。我が母校@青学の建学の父です!)
他の宗教でも、「兄弟愛」や「利他性」「互助精神」と表現するかもしれない。
私は自分のブログでマニアックな数字の話(クオンツ系の)をあまりしたくないのですが、ESG投資は一般投資と比べて現在のところ、それほど利益が得られる投資ではない、と言われています。
そこに敢えて個人の方が2か月の間に全世界で8兆円もの投資をされている。
金銭の利益と利他性を天秤にかけたとき、金銭的な利益のほうが重いのであれば一般投資信託を購入されたほうがいいはずです。
SNSやネットの世界だけではなく、投資の世界においても間違いなく、「個人の意志表示が世界を動かす時代」に突入しているのだ、と改めて感じます。
●個人の投資家がパワー(Driving force)となる。日本でのESG投資。日本の金融機関や企業という組織なんかからじゃない。
私が15年に渡って寄付をしてきた環境NGO団体『Japan for Sustainability』が活動休止に追い込まれたことはこのブログで以前、書きました。
小山ケイ過去記事】Japan for Sustainability (JFS)
原因はいわゆるリーマンショックによる企業からの寄付金が激減したことです。
団体の代表者は環境ジャーナリストで翻訳家の枝廣淳子さんです。アール・ゴア氏の「不都合な真実」を日本語訳されたかたでもあり、現在東京都の環境オブザーバーのような仕事もされておられます。NHKにもときおり出演されます。
企業は組織であって個人ではありません。
しかも、日本の組織は絶対性よりも相対性を重んじる。絶対的な価値基準よりも「組織でどうふるまうか」が重視される。
統合報告書やなになに書、と呼ばれる各企業の報告書をみる限りでは、昨今のサステナビリティブームやSDGsブームもあって「うちはこれだけやってます」と良いことづくめで書いておられる。
いっけん、ESG投資にはとても適した銘柄企業のように思えます。
けれど、そうした企業から土壌汚染を促す事件が起きたり、いつまでたっても男性の育児休暇取得率が増えなかったり、マタハラがあったり、不正会計事件がおきたり(取得しようとしない、のではなく、取得しようとするお父さんお母さんたちに対して、組織人としてこうふるまうべき、の相対的な価値観を上やまわりから押し付けられるということ)。
私はそうした事実を約15年の間にさんざん、みてきました。
(某世界的な内視鏡・デジカメ企業は不正会計事件が発覚する直前まで、国内においてはマネジメントの優良企業として表彰されていたほどです)
だから、私にとっては日本企業はエクスキューズで「サステナビリティ」や「SDGs」をやっているようにしかみえないのです。
日本企業でサステナビリティ関連の部署から異動になれば、その組織人は移った先の部署の仕事に没頭することになります。サステナビリティのサの字も出てこないほどに。
サステナビリティや環境CSR関連の部署は、日本企業では一部署にすぎないんじゃないか、とすら思える。
これからの日本企業は、社長室や取締役会、経営企画室などの企業の「本丸」にESGや環境CSRがなくてはならない。けれど、推し進めるには体力と時間を要します。それも日本の企業組織の性格からすると、「男性が率先して」やることが求められる>だって女になんか、言われたかないでしょ?
(女に言われて「はいすみません」でやれるようならとっくに変わってると思います。笑>日本企業)
だから、ESG投資においてはしばらくはコーポレートなものを脱する。
まったく拒絶する必要はもちろんないですが、オンラインの世界が指数関数的に個がパワーを発揮していくのに比例して、ESG投資も個人がパワーを発揮していく。
そしてそれが可能な時代がすぐ目の前にきています。
私が思う「ESG投資やその市場への影響力を発揮することにおける個人ができること」は次の通りです。
1) できれば、投資先企業の定性分析をしてみる。
数字ももちろん大切です。けれど、私が15年以上に渡ってサステナビリティにかかわってきたなかで、とても違和感を感じたのが、たとえば環境報告書・持続可能性報告書などにおいても「すべてを数値化しようとすること」。
製作するための何百ページにもわたる「指標」まで用意されています。
だからよけい、報告書づくりが難儀になる。企業にとって。
NGO/NPOから企業に対して送られてくる質問状も数値化が根底にあります。
よって、数値化の専門家は世界にごまんといるということ。
これからの時代、数値化はAIがやってくれます。笑
指標やデータをAIに入力すれば、人間以上に正確に投資先のESG度を定量分析してくれます。
人間である私たち個人投資家は、AI(あるいは数値化が好きなかたがた)が見ることのできない「職場の雰囲気」「従業員の方による裏情報」「口コミ」「見えざるハラスメント」「組織文化」「うわさ」あるいは「ESG企業としての将来性」にいたるまで見ていくことで、定量分析と定性分析の双方向からESG投資というものを見ることができる。そしてESG投資に影響力を与えるのです。
2) 日本で年金の保険料を支払っている以上、私たちは「投資家」です。
二十歳の学生さんであってもそうです。
私たちが支払った年金保険料を、独立行政法人GPIFは金融機関等に運用を任せるからです。
どれだけ巨額の「投資額」であるのか。
だからこそGPIFは「眠れるくじら」と称されるのです。
3) 世界の名だたる「モノ言う投資家」を研究してみる。
おすすめは、米国カリフォルニア州職員退職年金基金CalPERSです。
少し前にはキリンの株主である英国投資ファンドFranchise Partnersが株主としてキリンにモノを言っていました。新聞記事にもなりましたよね。
私たち個人個人も、自分の投資先が「おかしい」と思ったら行動を起こす必要に迫られるときがくると思います。
4) ESG投資の「口コミレビュ」。
ご自身の投資銘柄企業の動向や数値、分析について、オンラインで発信する。
良いことも悪いことも。
投資信託であれば、ファンド内の銘柄企業を個人個人が調べる。
個人の行動が企業組織を動かす時代に突入しています。
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